ホームメンズエステチャイエスとメンエスはどう違うのか—中国・韓国エステの歴史と構造、そして摘発されても消えない理由

チャイエスとメンエスはどう違うのか—中国・韓国エステの歴史と構造、そして摘発されても消えない理由

「マッサージするだけの店」という決まり文句

2026年6月、兵庫県尼崎市の雑居ビルで個室マッサージ店を経営していた女性ら3人が、風営法違反の疑いで逮捕された。経営者と店長、従業員のうち2人は中国籍。禁止地域内で複数の男性客に性的サービスを提供した疑いだ。

3人は調べに対し「性風俗店ではなく、マッサージをするだけの店」と容疑を否認している。

この「マッサージするだけの店」という否認の言葉は、この種の摘発事案で繰り返し登場する定型句だ。2025年5月の五反田の摘発でも2026年6月の同エリアでの摘発でも、似たような構図が繰り返されてきた。

なぜ同じ業態が繰り返し摘発されるのか。そしてなぜ消えないのか。その答えを理解するには「チャイエス」と呼ばれる業態の歴史と構造を知る必要がある。


チャイエスとは何か—発祥と歴史

チャイエスとは「チャイニーズエステ」の略で、主に中国大陸出身の女性セラピストが男性客に対してマッサージや性的サービスを提供する業態を指す。ただし実態としては中国人に限らず、韓国・台湾・タイなどアジア系全般を含む場合も多く「アジアンエステ」と呼ばれることもある。

チャイエスの起源は不明な点が多いが、在日中国人の出稼ぎ者が急増した1990年代中盤以降、大都市圏の繁華街にできた中国マッサージ店が原型だと思われる。当初、中国人の女性従業員が客単価を上げるための追加サービスとして、日本人の男性客向けにこっそりと手を使った回春マッサージを行っていたところ、いつしか行為がエスカレートして売春がメインになった。

中国エステは80年代後半からどんどん増え続け、いまや全国津々浦々にまで広がっている。

バブル期の日本には「中国残留孤児」の帰国運動や留学生受け入れ拡大を背景に、在日中国人人口が急増した時期があった。1990年代には中国国内の経済格差を背景に出稼ぎ目的の渡航者が増加し、日本語がほとんど話せなくても参入できる業態としてマッサージ店が定着していった。

当初は純粋なマッサージ店として始まった店も多かったが、客単価を上げるための「追加サービス」が競争の中で標準化していき現在のような業態に変容した、というのが大まかな流れだ。


業態の構造—「ヌキあり」と「健全店」

中国エステの大半は表向き「リラクゼーション店」をうたい、「非風俗店」ということで営業している。形態は大きく2つに分けられる。射精に至るまでのサービスを行う「ヌキあり」店と、マッサージだけの「ヌキなし」店(業界では「健全店」と呼ばれている)だ。

「非風俗店」として届け出ることで、風営法上の規制(営業時間・禁止区域・届出義務など)を回避できる。これが業態の根本的なグレーゾーンといえるだろう。

施術内容としてはオイルを使ったボディマッサージや泡洗体(大量の泡で全身を洗う施術)が基本で、本格的な指圧も提供される。純粋にマッサージ目的で利用する客も存在し、「健全店」として適法に営業している店舗も実際にある。問題はその「健全店」と「ヌキあり店」が外見上ほぼ区別がつかないことだ。


韓国エステはまた別の文脈

チャイエスと混同されやすいが、韓国エステ(コリエス)はやや異なる文脈で発展してきた。

韓国のエステ文化は、アカスリ・コルギ(骨気)・オイルマッサージといった美容・健康目的の施術が本来の主流だ。在日韓国人コミュニティを基盤にした店舗は、チャイエスよりさらに歴史が古い。特にアカスリは銭湯文化と親和性が高く、日本各地に正規の美容施術として定着している。

ただし日本国内の「コリエス」と呼ばれる業態の中には、チャイエスと同様の性的サービスを提供する店が混在している。外見上の区別がつきにくいため、ユーザーの間では「アジアンエステ」として一括りにされることが多い。

こうした業態は日本人女性のみの店舗より古くから存在しているが、店舗によっては料金が明朗でない場合もある。


メンエスとの決定的な違い

近年急拡大した「メンズエステ」(メンエス)とチャイエスはしばしば混同されるが、起源も構造も異なる。

メンエスは2010年代以降に日本人経営・日本人キャストを中心として急拡大した比較的新しい業態だ。「性的サービスは提供しない」という建前を維持しながら、実態はグレーゾーンのサービスを提供する店が多い。オーナーは日本人でキャストも日本人女性が中心。集客はSNSやポータルサイト経由が主流で、価格帯は比較的高めだ。

対してチャイエスは、経営者・キャスト・客引き・スタッフが在日外国人コミュニティ内で完結していることが多い。集客は路上客引きが長年の主流だったが、摘発強化を受けてネット経由に移行する動きも出ている。価格帯はメンエスより低めで、施術時間に対するコストパフォーマンスの高さが売りの一つだ。

簡単に整理すると以下のようになる。

メンエスは2010年代以降に日本人が作り上げた「日本産業態」であり、チャイエスは1990年代から在日外国人コミュニティが形成してきた「移民経済の産物」だ。同じ「個室マッサージ」という形態を持ちながら、背景にある経済圏も人的ネットワークも全く異なる。


摘発されても消えない理由—独自の生態系

なぜ摘発が続いても業態が消えないのか。その理由はチャイエスが持つ独自の経済生態系にある。

初期投資の低さ

マンションや雑居ビルの一室があれば開業できる。看板も内装も最小限で済み、設備投資はマッサージ台と消耗品程度だ。摘発されて店を閉めても別の物件に移れば翌日にでも再開できる。

コミュニティ内完結の人材調達

経営者・キャスト・客引きの調達が在日外国人コミュニティ内で完結するため、外部への依存が少ない。キャストは中国・韓国・東南アジアから来た出稼ぎ女性で、日本語が不自由でも参入できる。コミュニティ内のネットワークで仕事が紹介され合うため、求人広告を出す必要もない。

店舗売買という独自の商慣習

店舗の売買が行われており価格は立地にもよるが、そこそこ流行っていた店なら200〜400万円くらいが相場。数店舗転がすオーナーや副業で転売仲介をする日本人なども入り乱れている。

「居抜き」での売買が常態化しているため、摘発で1軒が潰れても翌月には同じ物件に別のオーナーが入居して再開するというサイクルが機能する。物件・設備・顧客リストが一体で売買されるため、実質的に業態が「引き継がれる」構造だ。

法的なグレーゾーンの活用

「非風俗店」として届け出ることで、風営法上の届出義務・禁止区域・営業時間規制を回避できる。摘発のためには警察が実際にサービス内容を確認する必要があり、証拠収集に時間がかかる。その間、営業を続けられる。

今回の尼崎の事件では、2025年10月から2026年2月までの約4カ月間の営業が問題とされている。その間、警察は証拠を積み上げながら捜査を進めていたわけだが、店は「マッサージするだけの店」として表向き何事もなく営業を続けていた。摘発までにこれだけの時間がかかること自体が、この業態の「捕まえにくさ」を示している。


近年の変化—ネット化と多国籍化

チャイエスは近年、いくつかの変化を見せている。

まず集客手法の変化だ。

かつての路上客引きは業態の代名詞的な存在だったが、取り締まり強化を受けてその姿は減りつつある。代わりに台頭しているのがSNSや予約サービスを使ったオンライン集客で、店舗の存在を路上で可視化せずネット上だけで客を集めることで摘発リスクを下げる狙いがある。繁華街の雑居ビルに看板すら出さず、検索で見つけた客だけを受け入れる形態も増えている。

次にキャストの多国籍化だ。かつては中国人が圧倒的に多かったが、近年はベトナム・タイ・モンゴルなど東南アジア・中央アジア系の女性も増えている。「チャイエス」という呼称が実態と乖離してきており、業界内では「アジアンエステ」という言葉の方が実情に近くなっている面もある。この多国籍化の背景には、中国国内の経済発展により以前ほど日本での出稼ぎ旨みが薄れてきたことも一因として指摘される。

一方で、路上客引きが今も続く繁華街も存在する。東京・五反田では「1万円で最後まで」という明示的な価格設定と看板なし・路上客引きを組み合わせた手口が定着しており、歌舞伎町でも同様の手口を模倣した店舗が摘発された事例がある。


働く女性たちの実態

この業態を語るうえで見落とせないのが、キャストとして働く女性たちの実態だ。

出稼ぎで来日した女性の多くは、日本語が不自由で法的なリスクを十分に理解していない。コミュニティ内の知人を通じて紹介された仕事という認識で働き始め、実態が違法であることを後から知るケースも少なくない。

賃金は日本の一般的な労働市場と比較すれば高いケースが多いが、コミュニティ内での人間関係や負債(渡航費用・住居費の前払いなど)によって、辞めにくい状況に置かれている場合もある。摘発時に逮捕されるのは経営者だけでなくキャストも対象になることがあり、被害者と加害者の境界が曖昧なケースが存在する。

今回の尼崎の事件でも、逮捕されたのは経営者の女性・店長の女性・従業員の女性の3人だ。経営側と労働側の線引きがどこにあるのかは、現時点では公開情報からは判断できない。


「消えない業態」が問いかけるもの

摘発が繰り返されても業態が消えない現実は、単に取り締まりの問題ではない。

需要が存在する限り供給は続く。そして供給コストが極めて低く、コミュニティ内で人材調達が完結し、店舗売買によって資産が引き継がれる限り、摘発はコストの一つとして織り込まれていく。

「マッサージするだけの店」という否認の言葉は、法的なグレーゾーンを最大限活用した業態の、最後の盾だ。その盾が崩れても同じ場所に同じ構造の店が翌月には現れる。

この構造を変えるためには、取り締まりの強化だけでは限界がある。需要側への働きかけコミュニティ内の労働実態への支援、そして在日外国人女性の労働環境の改善という、より根本的な問いに向き合う必要がある。

PulseDesk
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Pulse Adult編集部。確認できた情報をもとに、アダルト産業のニュース・規制・カルチャーを取り上げています。
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