2026年5月19日、大阪府警は職業安定法違反の疑いで男2人を逮捕した。府警によると2人は2024年6月から7月にかけて、当時大学生だった20代の女性を性風俗店に紹介し、働かせた疑いが持たれている。女性は大阪・ミナミの路上で「かわいいね。高級店とか興味ないですか」と声をかけられたのがきっかけだったという。府警の聴き取りに対し女性は「マッチングアプリで知り合った推しのホストに会うためにお金が必要だった」と話した上で、「5か月ほど性風俗店で働いた」とも説明している。
路上での声かけから風俗店への斡旋、そして逮捕—この流れは決して珍しくない。スカウトによる風俗店への紹介行為は法律で明確に禁じられており、摘発が全国で相次いでいる。だが一方でスカウト経由で働くことを選ぶキャストは後を絶たない。なぜスカウトはなくならないのか、そしてなぜキャストにとってデメリットが大きいのか。この記事ではその構造を整理する。
スカウトはなぜ違法なのか
職業安定法では「有害業務」に就かせる目的で職業紹介等をする行為が禁止されており、これを一般的に「有害業務目的紹介」と呼ぶ。性風俗店、ソープランド、デリヘル、ファッションヘルス、アダルトビデオへの出演などは有害業務にあたるとされており、このような業務に女性をスカウトすると職業安定法違反に問われる可能性がある。
重要なのは、その性風俗店が風営法などの許可を取って適正に運営している店舗であっても、スカウトをすれば「有害業務の紹介」として職業安定法違反になり得るという点だ。つまり「ちゃんとした店を紹介しているから問題ない」という理屈は通らない。
有害業務目的紹介の罪で起訴され有罪になれば、1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金に処せられる。今回逮捕された2人も、まさにこの罪に問われている。
路上でのスカウト行為については、各都道府県の迷惑防止条例違反になる可能性もある。京都府では公衆の目に触れるような場所で性風俗店への勧誘をすることが条例で禁止されており、違反した場合には罰金や懲役が科される。大阪でも同様の条例が存在しており、今回の路上での声かけ行為はこうした規制にも抵触し得る。
それでもキャストがスカウトを求める理由
スカウトが違法であることは、業界にいれば多くの人が薄々知っている。それでもスカウト経由での入店を選ぶキャストが多いのはなぜか。
最大の理由は「条件が良さそうに見えるから」だ。スカウトグループは契約している全国の性風俗店にスカウトした女性を紹介し、SNS上で各店舗に最低保証金を提示させて、最終的に一番最低保証金の高かった店に女性を紹介するというシステムをとっていたケースもある。
つまりスカウトは、キャストに対して「私が一番条件のいい店を選んでおいてあげた」という印象を与える。保証金が高い、自由出勤が可能、ノルマがない—こうした好条件を前面に出して入店を促す手口は巧みだ。お金が急に必要な状況にある女性ほど、その言葉は響きやすい。
「スカウト経由」がキャストにとって損な理由
しかし実態は、スカウトを通すことがキャスト自身の手取りを減らす構造になっていることが多い。
スカウトバックとは、性風俗店がスカウトに支払う紹介料のことだ。女性が性風俗店で稼働した売上の一部がスカウトに支払われる仕組みで、「紹介料、顧問料その他名目のいかんを問わず」、紹介の対価として提供されたものはスカウトバックと認定される。さらに、1回限りではなく2回目以降に支払われる金銭も含まれる。
つまりキャストが在籍している間、継続的にスカウトへの支払いが発生し続ける可能性がある。そしてここが重要な点だが、女性が稼働した際の報酬がスカウトバック分を差し引いたものとなり、女性の手取り分が少なくなるため、女性が手取り分を増やそうとしてより多く稼働するよう追い込まれることも懸念されている。
表向きは「保証が高い」「条件がいい」と言われて入店したにもかかわらず、スカウトへの支払い分がキャスト自身の報酬から実質的に差し引かれている——こうした構造に気づかないまま働き続けているケースは珍しくない。さらに入店時に提示された条件が「引かれ物」で相殺されていたり、スカウトへのコンサルティング料名目の費用が間接的にキャストの取り分に影響している場合もある。
自分で直接店に連絡して入店した場合には発生しないコストを、スカウトを経由することで知らないうちに負担しているのがキャスト自身というのが実態だ。
2025年改正風営法でスカウトバックが明確に禁止された
2025年の改正風営法により、性風俗店がスカウトに対してスカウトバックを支払うことが新たに禁止され罰則も新設された。これは従来の職業安定法がスカウト側のみを規制していたのに対し「受け入れ側の店舗」も規制対象に加えたという点で大きな変化だ。
法整備が進んでいる今、スカウト経由での入店はキャストにとってもリスクが増している。スカウトとの関係が第三者に明らかになった場合、捜査の過程で当事者として事情聴取を受ける可能性もゼロではない。
「声をかけてきた人」を信用しないことが身を守る第一歩
今回の事件で被害女性が路上で声をかけられたのは、大阪・ミナミという繁華街だった。大阪府警は「スカウトの中には、実態を偽って言葉巧みに勧誘し、アダルトビデオに出演させる者もいる」として、スカウトに安易に応じたり連絡先を教えないよう注意を呼びかけている。
風俗の仕事に興味があるなら、店のウェブサイトや求人媒体から直接応募する方が条件も明確で、余計なコストもかからない。スカウト経由の「好条件」は、構造的にキャスト自身が負担しているケースが多い。声をかけてきた人間が自分の味方であることは、まずない。

