ホーム事件・事故青森駅500mの「青線」跡地で風営法違反—戦後の闇市から続く第三新興街の歴史と今

青森駅500mの「青線」跡地で風営法違反—戦後の闇市から続く第三新興街の歴史と今

禁止地域で営業、3人を現行犯逮捕

2026年5月13日夜、青森市古川1丁目で店舗型性風俗特殊営業が禁止されている地域にもかかわらず性的サービスを提供したとして、風俗店の経営者と従業員の計3人が風営法違反の疑いで現行犯逮捕された。逮捕されたのはいずれも青森市に住む50代の女性経営者と、40代の女性従業員・男性従業員の3人。警察が店舗に捜査に入り、客への性的サービスを確認したうえで逮捕に踏み切った。

3人はいずれも容疑を認めており、「他の仕事をしておらず、生活費を稼ぐためにした」と供述しているという。警察は余罪や営業期間についても引き続き捜査を進めている。なお違法な性風俗営業で県内に逮捕者が出るのは、2025年9月以来のことだ。

逮捕された店舗があったのは、通称「第三新興街」と呼ばれるエリア。青森駅からわずか徒歩5分、直線距離でおよそ500メートルという駅近の一角に位置しながら、昭和の面影をそのまま残すバラック建築の路地として知られた場所だ。地元出身者の中には「子どものころ、家族から近づかない方がいいと言われていた」と話す人もいる。

「青線」とは何か—戦後の混乱が生んだグレーゾーン

今回の摘発現場となった第三新興街には、「青線」と呼ばれる戦後の性風俗の歴史が色濃く刻まれている。

青線とは1946年のGHQによる公娼廃止指令以降、1958年の売春防止法の全面実施までの間、非合法で売春が行われていた地域のことを指す。同時期に存在した「赤線」が警察の黙認のもとで特殊飲食店として半ば公認されていたのに対し、青線は飲食店としての営業許可(保健所の認可)のみを得た状態で、実態として非合法の売春を行っていたエリアだ。

建前上は飲食店や小料理屋の形をとりながら、女性従業員が別室で客に応対するというスタイルが典型的だった。赤線よりも管理が行き届かず非合法色が強い反面、料金は安価だったともいわれる。

1958年に売春防止法が罰則を伴って全面施行されると、赤線・青線ともに名目上の廃止を余儀なくされた。ただし、そのまま飲食店として業態を続けるケースや今日で言う性風俗店に転換するケース、あるいは「ちょんの間」と呼ばれる形で実態を残し続けるケースも少なくなかった。第三新興街はまさに、そうした戦後の遺産が脈々と生き続けた場所のひとつとされている。

戦後の闇市から色街へ—第三新興街70年の変遷

第三新興街の起源は、敗戦直後の混乱期にさかのぼる。終戦後の物資不足と統制経済が生んだ「闇市」が母体とされ、バラック建築が雑然と立ち並ぶ一角として生まれた。

こうしたバラック街は土地の権利関係が整備される以前に無秩序に建てられたため行政も立ち退きや整備に介入しにくく、そのまま残存し続けることが多い。第三新興街も同様で戦後から高度経済成長期にかけて物販店が立ち並ぶ雑多な商業エリアとして機能した後、時代とともに省スペースで収益を上げやすい飲み屋へ業態が移行。さらに青線的な色街としての側面が加わっていったとされる。

青森駅周辺は近年の再開発によって大きく変貌を遂げ、新しい商業施設や整備された街並みへと生まれ変わっている。しかし第三新興街は再開発の波に飲み込まれることなく、バラック長屋の外観を今もほぼそのまま保っている。古びたアーチ、乱雑に走る配線、2階から張り出すように増築された建物——それらが昭和の記憶を今に伝えるランドスケープとして、近年は廃墟や昭和レトロを愛好するカルチャーの中で注目を集めるようになっていた。

一方で夜になれば「裏の顔」を持つエリアとしての評判も根強く、性的サービスを提供する店舗が細々と営業を続けていたことは地元では公然の事実だったようだ。

法的には明確にアウト—「禁止地域」という壁

今回の摘発で問題となったのは、この地域が風営法によって「店舗型性風俗特殊営業の禁止地域」に指定されていることだ。風俗営業法では住宅地や商業地の種別に応じて性風俗営業が許可される地域と禁止される地域が定められており、青森市古川1丁目はその禁止地域にあたる。

青線時代の名残として非合法営業が長く続いていた地域であっても、現代の法体系のもとでは一切の例外は認められない。「生活費のため」という動機が事情として酌量される余地はあっても、違法であることは揺るぎない事実だ。

80年近い時を経ても、戦後の混乱が生んだ「グレーゾーン」の残滓は消えきっていなかった——第三新興街での今回の逮捕劇は、日本の近現代史が刻んだ傷跡が今もなお法の問題として現れていることを、あらためて浮き彫りにした。

PulseDesk
PulseDeskhttps://www.pulseadult.com/
Pulse Adult編集部。確認できた情報をもとに、アダルト産業のニュース・規制・カルチャーを取り上げています。
RELATED ARTICLES

人気のエントリー