ホームアダルトグッズ戦争がコンドームを値上げする—ナフサ不足が下半身産業に与える影響

戦争がコンドームを値上げする—ナフサ不足が下半身産業に与える影響

2026年4月、世界最大のコンドームメーカーであるマレーシアのカレックスのCEOが、ロイター通信の取材に対してこう語った。「状況は非常に不安定で価格は高騰している。現時点ではコストを顧客に転嫁する以外に選択肢はない」—コンドームが20〜30%値上がりする可能性があるという。

引き金を引いたのは中東情勢だ。2026年2月末に始まったイランへの軍事攻撃とホルムズ海峡の封鎖懸念が、世界のサプライチェーンを揺るがしている。その影響は石油・ガスだけにとどまらず、コンドーム・アダルトグッズ・ローションといった下半身産業の必需品にも静かに及びつつある。


そもそもナフサとは何か

話の核心にあるのが「ナフサ」という物質だ。ナフサは原油を精製する過程で得られる石油化学製品の基礎原料であり、プラスチック・合成ゴム・合成繊維・塗料・医薬品など、現代社会を支えるほぼ全ての化学製品の「出発点」となっている。

日本はナフサ輸入の約74%を中東産に依存しており、ホルムズ海峡の混乱は日本のナフサ調達に直接的な打撃を与えた。原油には国家備蓄(約250日分)が整備されているが、ナフサには国家備蓄制度がない。民間在庫は約20日分という非常に薄い水準だったため、今回の中東情勢の緊迫化は即座に石油化学産業の稼働に影響した。

2026年3月のナフサ市況は、わずか2週間で1トンあたり600ドル台後半から1,100円前後へと急騰した。この急騰がさまざまな製品のコストに波及している。


コンドームへの影響

コンドームの主原料はラテックス(天然ゴム)だが、ナフサはコンドーム製造の別の場面で重要な役割を果たしている。CNNの報道によると、コンドーム製造に使用されるシリコンオイルとアンモニア、そして包装材の製造に使用されるナフサの供給が、ホルムズ海峡封鎖の影響で途絶えている。

カレックスの生産能力は年間50億個を超え、130カ国以上に輸出されている。この世界最大のメーカーが20〜30%の値上げを示唆しているという事実は、業界全体への価格転嫁が起きることをほぼ意味している。

出荷の遅延も発生しており、需要が高いコンドームが目的地に到着せず船上に積みっぱなしになっているケースも多いという。値上がりの前に供給不足が先に来る可能性もある。


シリコン製アダルトグッズへの影響

バイブレーターやディルドをはじめとするシリコン製アダルトグッズは、より直接的な影響を受ける。

シリコーンの主要原料は、ナフサから分解されて得られるトルエンやキシレンだ。2026年4月17日、国内シリコーンシェア1位・世界シェア4位の信越化学工業がナフサ価格の高騰を理由に全シリコーン製品の10%以上の値上げを発表した(2026年5月1日出荷分から適用)。化粧品メーカーへのコスト転嫁が今後進む見込みだ。

アダルトグッズメーカーも同じ原材料を使っている以上、この値上げの影響は避けられない。「医療用グレードのシリコーン」を売りにする高品質なアダルトグッズほど、コストへの影響は大きくなる可能性がある。

さらに商品のパッケージ・容器もナフサ由来のポリエチレンで作られている。ポリエチレン製品は2026年5月下旬から30%以上の値上げが見込まれており、商品本体だけでなく包装コストも同時に上昇する。


ローション・潤滑剤への影響

ローションや潤滑剤の主要成分であるプロピレングリコール(PG)やブチレングリコール(BG)も、ナフサを原料とする石油化学由来の成分だ。

BGはナフサ由来の化学品であり、ナフサ由来の化学品コストが上昇すればBGの製造コストも連動して上がる。ローションに含まれるこれらの保湿・溶剤成分のコスト上昇は、製品価格への転嫁が避けられない方向に動いている。

日本触媒などが酸化エチレン系製品を90円/kg以上値上げすると発表しており、洗剤・シャンプー・ボディソープなどの価格上昇につながるとみられている。ローション類もこの流れの中にある。


いつ値上がりが来るのか

すぐに店頭価格が変わるわけではない。ナフサ価格が上昇してから家庭の購買価格に反映されるまでには、おおむね1〜3ヶ月程度のタイムラグがあることが多い。製品在庫・流通在庫・価格改定のサイクルを経るためだ。

2026年3月からのナフサ急騰を起点に考えると、アダルトグッズやローションへの価格転嫁が本格化するのは2026年夏ごろになると予想される。シリコン製品については信越化学工業が5月1日出荷分から値上げを適用しており、メーカーからの価格改定通知が流通に届くのはそう遠くないタイミングだ。


戦争はコンドームまで値上げする

中東での戦争がコンドームやバイブレーターの値段を上げる—一見すると突飛に聞こえるが、ナフサというサプライチェーンの上流を押さえると、この連鎖は必然だとわかる。

下半身産業に関わる製品は「嗜好品だから多少高くても買う」という需要の特性があるため、価格転嫁がされやすい側面もある。しかし風俗店がコンドームやローションの仕入れコストの上昇を価格に転嫁できるかどうかは、競合との兼ね合いや客単価の上限に縛られる。コスト増加の影響は、最終的にはキャストや店舗の収益を圧迫する形で現れる可能性がある。

世界情勢が「下半身」にまで影響する時代に、私たちはいる。

PulseDesk
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Pulse Adult編集部。確認できた情報をもとに、アダルト産業のニュース・規制・カルチャーを取り上げています。
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